インターネットを介して自分が持つモノやスペースを他人に売ったり貸したりする「シェアサービス」をめぐる消費者相談が、2021年4月以降で500件超に上ったことが、国民生活センターのまとめでわかった。
消費者庁はトラブル回避の方法の一つとして、プラットフォーム(PF)を介した取引を推奨していたが、そのPFが新たなトラブルの火種となるケースも生まれている。
同センターでは、シェアサービスが急速に広がった21年度からサービス全体の相談について集計を開始。それによると、21年度は184件、22年度は196件、23年度は2月1日までで129件の相談があり、3年弱で計509件に上った。
消費者庁は、21年10月に発行したシェアリングエコノミーの「利用ガイドブック」の中で、シェアサービスを①空間②モノ③スキル④移動⑤お金――の5類型に分類。具体的に①は民泊、②はフリーマーケットサービス、③は家事代行、④はカーシェア、⑤はクラウドファンディングなどを指すという。
その上で同庁は、個人同士の取引で気をつけるべき点として、必ずPF上で取引するよう勧めていた。直接取引はPFで禁じられている場合があるだけでなく、「商品が届かない」といったトラブルに巻き込まれる危険性があるからだという。
しかし今年1月31日、高級腕時計を借りたい人と所有者をつなぐPF「トケマッチ」が突然、サービスを終了。運営会社と連絡がつかなくなったとして、腕時計を貸し出したままになっている所有者が不安に駆られている。
国民生活センターによると、全国の消費生活センターにはサービスが終了した当日から2月8日までに、この運営会社に関する相談が計19件、寄せられた。ほとんどが腕時計の所有者からで、「預けた腕時計がまだ返ってこない」「腕時計を返してほしいが、事業者と連絡が取れなくなりどうしたらよいか」といった内容だという。
ある所有者の男性(37)はロレックスやA・ランゲ&ゾーネ、オーデマ・ピゲなど40本以上をトケマッチ側に貸し出したが、大半が返されていない。「趣味として買ったものや、昇進したときなど人生の節目で自分へのご褒美として買ったものもあった。一つ一つ、いつどんな心情で買ったのかも覚えている。それが返ってこないとなり、動揺している」(佐野楓)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル